特集:輝く!新潟企業家[2018年2月号]

㈱ With You 代表取締役社長 小林 俊介さん(柏崎支部)

『働く』を通じて社会を変える挑戦

小林 俊介さん(柏崎支部)
㈱ With You 代表取締役社長

 上越市大字上千原。市街化調整区域にも指定された穏やかな集落。30年前の記憶の中の風景と今見る風景に大差がないような故郷。そこでは誰もが共に生活していました。「障害」などという概念はなく、共に遊び、共に学び、時には喧嘩をすることも。下校途中に喧嘩をしている私たちを叱り、注意してくれるのも特別な資格を持った専門職ではなく、地域の方々。自宅に帰ると統合失調症の叔母が遊び相手でした。もっとも、そんな病名を知ったのは比較的最近のこと。どうだっていいことなのです。統合失調症だろうがダウン症だろうが知的障害だろうが、そんなものは誰かが勝手につけた個性の呼び名です。私にとっては大切な家族です。自宅の目の前の小屋では父が会社を営んでいました。地域の主婦の人たちと、少し変わった人たちと一緒に。私にとっての「少し変わった人」は一家に一人、地域に数人、クラスにも数人いるもので、会社という組織は、色んな人が一緒に働く組織なんだという認識でした。

自分の天命に気づかせてくれた交通事故

 時が経ち、幼少期の記憶は薄れ、気が付いた時には「少し変わった人」の姿を見かけることが極めて少なくなっていました。しかし、そんなことは気にもせず、目の前の友人や、目の前に広がっている社会だけを見ていました。  16歳〜25歳までの間に6回の交通事故を経験しました。そして極め付けは2010年の元旦。ハイドロプレーニングでコントロール不能になり対向車線で正面衝突。 頭が割れ、大量の出血。完全に死を覚悟しました。薄れゆく意識の中で今までの人生を振り返り、後悔ばかりが廻りました。「何の為の人生だったんだ」と。同時に「もし助かって明日を迎えることが出来たのなら生まれ変わろう。何か世の中のためになることをしよう」漠然とそう思いました。

 そして幸いにも助けていただき、考えました。「自分に何が出来るのか」ろくに勉強もせず、バイクにバイトに麻雀に明け暮れていた学生時代。中途半端に中間管理職をこなしていた昨年までの自分。そんな自分に何が出来るのか。・・・思い出しました。幼少期の経験を。ごく身近だった「少し変わった人たち」との関わりを。

 「そうか、その為に助かったのか。今までの事故も含めて命拾いしてきたのはそういうことか。」少しオカルトっぽいですが、今でも本気でそう思っています。

それが私の天命だと。

㈱ With You 「経験を活かす」と、ひと言で言っても、単純に障害者雇用をするだけでは少し違う気がしました。もっとこう、社会にインパクトを与えることが出来るようなアクションがしたいと。「障害」というものと関わりを持ったことがない人たちも巻き込んで、大好きな地元の気持ちのいい人間関係を広く社会に浸透させるような、そんなことをしたい。

福祉の現場にビジネス的な目線を持たせて

 全くの無知だった為、自分なりに情報を集めました。「特別支援学級」「特別支援学校」「福祉サービス」「就労継続支援事業」「自立支援協議会」今では当たり前に使っていますが、五年ほど前までは全く知らなかった言葉です。今現在の障害者を取り巻く環境は、自ら知ろうとしなければ、恐らくは一生知らずに終わるかもしれません。それほど限定された閉鎖的な世界なのです。少なくとも私はそう感じました。それを打破し、時代を逆戻りさせるようなことが正しいかはわかりません。しかし、私はそんな関係性で成り立っていたあの頃が大好きです。自分の子供にもあんな風に育ってもらいたいのです。

仕事風景1 話を戻しますが、単なる障害者雇用では社会は大きく変わりません。では何をするか。情報収集をする中で気が付きました。「働く」という行為に関して、福祉と企業に大きな差があるのだと。隔離された学生時代を過ごし、高等部の卒業が迫った頃から急に社会を意識しなければならなくなり、卒業後は福祉の作業所で時給100円程度で働き、自宅と作業所を施設の送迎車で行き来する日々を送る当事者がいます。一方で企業は慢性的な人手不足。一定以上の企業では障害者雇用が義務化されているにも拘らず、雇用は思うように進まない現状。違いを知らないことから生まれるギャップが今の理不尽さを生み出していると気付いたのです。福祉の現場にビジネス的な目線を持たせて企業が望むような人材を育て、高い賃金を実現させて社会参加を図らせるとともに、企業に対しては、社内の改善や障害があっても働きやすい仕組みづくりを提案すれば、きっと世の中少しずつでも変わるはず。

 「就労継続支援A型事業」それが一つの手段でした。柏崎市では初で唯一。障害がある方と雇用契約を結び、一般企業で働く為の訓練を提供します。訓練と言っても自動車や医療器具、カメラやパソコンなどに使用される部品に携わる重要な仕事です。お情けで買ってもらうような商品を作り、二束三文で売るのではなく、求められ、必要とされる仕事をこなし、しっかりと給料を稼ぎ、働く喜びと、大変さを知ることで、さらなる労働の意欲が生まれます。彼らは今後きっと色々な企業で活躍してくれるはずです。

仕事風景2 仕事の内容以外でも様々な仕掛けを散りばめました。例えば、「送迎を一切しない」がそうです。公共交通手段を使うか自転車か徒歩で通うのが基本条件です。親御さんによる送迎も許可していません。結果的にまちの中に自然に溶け込みます。バスや電車を待つ際に喫茶店に入ったり、給料日には自分へのご褒美や家族へのプレゼントを購入したりしています。

 また、福祉のハードルを下げることも意識しています。私を含めて全ての社員は障害福祉の勉強など全くしたことがありません。9割がごく普通の主婦です。障害がある方と関わったり、ともに働くことに特別、資格や実務経験を求める必要がないことを示していきたいのです。

色んな人がいるから 世の中は面白い

 最後になりますが、私も含め全ての人のすぐそばに「生きづらさ」は存在します。「障害」と名がついていなくても、目が悪かったり、耳が遠かったり、神経質だったり、大雑把だったり。色んな人がいるから世の中は面白く、色んな人の個性的な能力で世の中は成り立っています。彼らがもっと活躍出来る社会を私は追い続けたいと思います。

【㈱ With You 小林 俊介(柏崎支部)記】


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◎事業内容
製造業が主体の就労継続支援A型事業