企業進化論〈49〉㈱やさいのひ[2018年7月号]

㈱やさいのひ

同友会に入ったおかげで経営に前向きになれた。

㈱やさいのひ
代表取締役:梅田 みどり(うめだ みどり)

住所:上越市春日山町2-11-22
Tel.025-522-6414
Fax.025-512-5825
事業内容:料理教室・ケータリング・ベーカリー
創業:2012年5月/社員数:5名(パート含む)

小さな偶然から生まれた仕事

 株式会社やさいのひは、今年で創業7年目を迎えました。料理教室、ケータリング、ベーカリーが主な事業内容で、野菜を中心としたヘルシーで健康的な商品の販売とメニュー提案をしています。

 やさいのひの始まりは15年前にさかのぼります。当時専業主婦だった私は、地元新聞社でアルバイトをしていました。ちょうどその時、新聞の「料理欄」を担当していた方が辞めたため、後任の仕事が私に任されることになりました。主婦なら料理を作れるだろうという簡単な理由でした。その欄は、女性読者を増やしたいと設けられた企画欄で、月曜から土曜まで毎日料理のレシピを掲載するというものでした。料理は好きでしたが、まさかそんな大役を素人が引き受けていいものだろうかと悩みました。しかし、「数か月やってくれたら別の人を探すから」と言われ、せっかくチャンスをいただいたのだからチャレンジしてみようと引き受けることにしたのです。しかしその時、できないと思って引き受けなければ今の「やさいのひ」はありえなかったと思います。

専業主婦から料理研究家へ

 掲載の始まった2006年の4月からいきなり「料理研究家・梅田みどり」が誕生し、実績も経験もない素人のレシピが地元の新聞に毎日掲載されました、レシピを書くのも撮影用のスタイリングも初めてのことでしたが、新聞社に予算がないので、すべて一人でやらなければなりませんでした。結局、数か月経っても私のレシピは、そのまま連載されることになりました。それまでは、おもてなし用に作っていた料理のレシピを書き起こしていたのですが、このまま続けていくには無理があると思い、普段食べている野菜の簡単な料理を掲載してみました。すると、読者から「作ってみたら美味しかった」という反応が来はじめ、誰かの役に立っている実感を得ることができました。その後、「野菜ソムリエ」の資格を取り、野菜に対する知識や経験を積む努力をしながら、新聞のレシピはどんどん野菜中心になっていきました。

 2010年からは書き溜めたレシピをもとに料理教室を始め、現在は年間200回以上の料理教室を開催し、年間約3000人の生徒さんが来るようになりました。参加者の7割が60代の女性で、新聞のレシピのファンでもありました。その方々が最初から教室の底辺を支えてくれて、料理教室を口コミで広めてくれたり、新たな友人を誘って参加してくださることで、料理教室継続の原動力となっています。

 料理教室を開催するようになってすぐ、ケーブルテレビ局の料理番組を持つ事になりました。15分ほどで1品の料理が完成する番組が4年間続き、番組を見て料理教室に参加して下さる方も多くなり、とてもいい宣伝ツールになりました。

 2011年には、新聞に掲載されたレシピを四季ごとにまとめた本「きょうは野菜の日」が4冊出版されました。盛大な出版記念パーティを2回開催していただき、たくさんの地元メディアに登場するきっかけになりました。そして新聞の連載は現在13年目に入り、レシピ数は4000近くになっています。

 新聞、本、テレビ番組、料理教室を通して、私のレシピはたくさんの家庭の食卓に登場するようになりました。それと同時に、様々な仕事の依頼が来るようになり、商品開発、料理のプロデュースやイベントの企画、講演など、そのたびに新しいチャレンジをしてきました。

自分一人で進んでいた「やさいのひ」

 2012年の春に会社を設立し、株式会社やさいのひが誕生しました。とはいっても、料理教室、ケータリング、ベーカリーの3本の事業をほぼ一人で開始し、忙しい時だけアルバイトを雇ってまわしていく。個人事業の延長でした。仕事のアイデアはどんどん出てくるので、寝る時間を惜しんで一人で何でもやろうと思っていました。

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 当初週三日の営業で開始したベーカリーは、前日の夕方から生地を仕込み、翌日の早朝から一人でパンを焼きました。平日の店番はアルバイトを数時間雇い、日曜日は当時小学4年生だった娘がレジ打ちをし、店番をしました。コンセプトは、乳製品・卵を使用しないヘルシーパン。実際に娘が乳製品・卵アレルギーだったため、毎日家庭の中で手作りしていたパンのレシピが、元になったのです。私が食べたい、地元では買えないパンを作って販売しはじめると、50代~60代の女性のお客様がリピートしてくださるようになり、健康志向の方やアレルギーの方にも喜ばれるようになると、簡単にやめられなくなりました。しばらくして出張販売を始めると製造数が追い付かなくなり、早朝のバイトや販売のバイトを増やして回しました。しかし、アルバイトが増えると商品のクオリティが少しずつ下がり、売上も伸び悩むようになりました。その頃は経営者としてとても未熟で、税理士さんにすべて丸投げで数字を見ることすらできていませんでした。人を雇用して育てることもできず、会社の経営もわからない。私の労働時間が会社の売り上げに直結していて、休むことが不安でした。ずっと目を閉じて走っているような状態が3年ほど続きました。

「想い」「こだわり」「前向き」に

 このままでは会社も自分もつぶれてしまうと思い、一念発起してベーカリー事業を拡大することにしました。2016年の秋、銀行からの借り入れによって店舗を新しく建設し、週6日営業に切り替えました。それと同時に社員を4名雇用。しかし、人や営業日が増えても売り上げはあまり伸びず、店舗建設や新しく入れた設備の返済と人件費で赤字がどんどん増えていきました。

 そんな時、中小企業家同友会に誘われ、2017年の6月に入会しました。それまで、経営のアドバイスをくれる先輩方はたくさんいたのですが、未熟な経営者の悩みを聞いてくれる人はいませんでした。しかし、入会してから私の悩みを親身になって聞いてくれる人たちと出会い、落ち込むことが少なくなったおかげで、経営に対して前向きになっていきました。

201807evolution3.jpg 今年の春には、ベーカリーの店舗をリニューアルし、新たなスタートを切りました。今のところ順調に来店客が増え、売り上げも安定してきました。それに加えて、新規の販売先が増えてきているので、今後はさらなる品質向上と社員が働きやすく育ちやすい環境を作ることに努力したいと思っています。

 「やさいのひ」には、専業主婦だった私の「家庭料理への想い」が込められています。三つの事業が重なり合ったところは、充実した家庭料理と健康的な食生活です。どこかの家庭の食卓が楽しく美味しく健康的になるよう、これからも手作りにこだわって丁寧な商品づくりをしていきたいと思います。

【株式会社 やさいのひ 代表取締役 梅田みどり(上越支部) 記】