同友にいがた vol.337[2015年10月号]

人口減少に耐えうる組織作りを目指して | 同友にいがた vol.337[2015年10月号]

人口減少に耐えうる組織作りを目指して

山下 峰生さん(佐渡支部) 株式会社クローバー佐渡 代表取締役

起業のきっかけ

私は現在、3ヶ所の介護施設を運営しています。自分で「起業しよう!」と思いついたのは、医療機関でリハビリの仕事をしている中で、病院では私が思うリハビリが提供できないことがきっかけでした。

クローバー佐渡のホームページ私は言語聴覚士というリハビリの資格を有しています。約10年ほど医療機関でリハビリの仕事をしていました。業務内容は成人の言語障害や高次脳機能障害、認知症、摂食嚥下障害等に対するリハビリを中心に行っていました。特に、脳血管疾患や神経難病から口から上手く食事が摂れない患者様に対し、口から食べるリハビリを提供する中で、患者様は食事が上手に取れず、どんどん衰弱し、身体機能も低下していく様を多く見てきました。病院は病気を治す所であって、障害や後遺症に対して当時はあまり積極的な介入を行いませんでした(現在はチーム医療が進歩し、少しずつ改善されてきています)。

こうした患者様を多く見ていく日々、私なりにたどりついたのが、予防医学でした。病気に合わせて、早期に栄養状態を改善し、入院中も早期にリハビリを開始することで、リハビリの成果を最大限得られることができればと考えていきました。もっと突き詰めていくと、病前から病気になりにくい身体状況や、病気になっても早期に回復できる身体作りを行えればとの結論に至りました。

起業はしたものの

自分なりの結論が出てからは、若さに任せて会社を設立し、リハビリや栄養管理ができるデイサービスを立ち上げました。それが8年前、32歳の出来事です。その後は悪戦苦闘の日々。リハビリは専門でも、デイサービスや法人の運営は初めてなので、わからないことばかり。(現在もですが...。)色んな方からご支援頂き、なんとか運営しておりました。

やっと安定して施設運営が行えるようになった頃、職員が体調を崩し入院しました。デイサービス等、介護施設には運営するために施設や人員に基準があり、自治体の許可が必要なのですが、資格を有した職員が不在となったため、デイサービスの人員基準を満たせなくなり、自治体の指導で営業停止になってしまいました。有資格者を追加で採用するにも、人探しから始めなければならず、仮にすぐ見つかったとしても、人件費の割合が高くなってしまうため、経営を圧迫する恐れがあり、対応に苦慮していました。幸い、職員は軽症ですぐ退院し、業務復帰して頂けたので助かりましたが、この一件から、ある程度事業規模を拡大し、有資格者等の余剰人員を確保しながら運営しないと、ご利用者様や職員に迷惑をかけてしまうという思いが強くなりました。

介護職員の人材確保の為に

幸い、私が事業を行っている佐渡市は高齢化率も、介護サービスの需要も高く、事業拡大自体は容易に計画できました。3つ目の少し大きな施設を計画している中、自治体の職員より、介護職員の人材確保策を尋ねられ、私は即答することができませんでした。この時、人口動態から労働者人口等を調べていくと、20年後くらいには佐渡島内で介護職員の確保が難渋する恐れが非常に高くなるという結論に達しました。日本全体が、少子高齢化で都市部に人口が集中する中、佐渡ヶ島という離島で、これから立ち上げる介護事業所を30年間、安定的に介護職員を確保するためにはどうすれば良いか、大きな課題となりました。労働者の定年を70歳まで引き上げる、事業規模を縮小する等々、様々な検討をしていく中で、EPA(経済協力連携)で外国人介護士がフィリピン、ベトナム、インドネシアの3ヶ国で認められている点に注目しました。

株式会社クローバー佐渡しかし、EPA で入ってきている外国人介護士は介護福祉士、看護師といった資格の合格率も低く、定着率も異常に低い点が大変気がかりでした。なぜ、定着率が低いのかを精査していくと、出国の際、日本語レベルが低く日本の介護の仕方、文化の違い等をわからないまま、日本に来て挫折していくケースが多いことがわかり、これらを解決すれば日本に来てからの定着率を高くすることができると判断しました。またEPA からの外国人介護士は手数料も高かったので、ならば自分で海外現地法人を設立し、現地で日本語や日本の文化、介護技術を教えた上で、日本に送り込めれば、EPA での上手くいかなかった点が解決できると考えました。

それから、様々な国を調べていく中で、私達はミャンマーという国と出会いました。私が初めてミャンマーを訪れた2012年当時は、軍事政権下も急速に進展した民主化から、欧米諸外国からの経済制裁も解除され、日本政府もインフラ整備等で支援をはじめた頃でした。街は人でごった返し、急成長を遂げている凄まじいパワーを感じました。また、国民の多くが仏教徒で親日だった点も、私がミャンマーに進出するきっかけの一つとなりました。

株式会社クローバー佐渡最初の訪問でミャンマーに惹かれた私は、翌年、現地法人設立を行い、2014年6月より、現地でヘルパーサービス、配食サービスを開始いたしました。これに平行して、日本に留学し介護業務を実践していく人材も育成し、2015年春には、佐渡ヶ島に2人のミャンマー人留学生が訪れ、日々介護の勉強と実践で汗を流しています。

政府は、介護と建設領域での人材不足解消に入管法等の改正を行い、2016年度からは介護分野においても外国人技能実習制度の活用も盛り込んでいます。今後、介護事業分野での外国人労働者は国内的にも増えていくものと思います。

質の高い介護サービスの提供の為に

私達は佐渡ヶ島の一企業であり、人口動態に左右されない安定的な介護事業を行っていくために外国人介護士の育成に取り組みました。余剰人材を抱え、質の高い介護サービスを実践するための布石として海外進出を果たしました。現在の流れを途切れることなく続けていくことで、これから30年間、地域の皆様から信を得て事業を継続することができると考えています。私達の法人が人口減少に耐えうる会社組織と成りえるか、今後試されるものと思います。

<株式会社クローバー佐渡 山下 峰生(佐渡支部)記>


▼取材班がみつけた会社の横顔

取材班がみつけた会社の横顔ケアセンターうしろやまの建物を見て、明るくて開放的な施設で、しかも体育館まであり、大きさに圧倒されました。入り口付近にあった小学校の看板があり何でここに?と思って話をを伺ったら廃校になった小学校をリフォームして利用されているとのことでした。お話を伺って印象に残っている事の1 つが、本州では気づきにくい人口減少の問題について佐渡では敏感に感じ、介護職員を確保する事に力を入れている点です。今後、国内だけで介護職員を確保する事に危機感を持ち海外に人材を求めてミャンマーに学校を作り、学んだ人を日本に受け入れるそうです。それだけでは無く日本で仕事をしてミャンマーに帰っても仕事が出来るようにミャンマーに介護の文化を育ている点など働く人の人生もしっかり考えている点に驚きました。

話を聞いていて物腰が柔らかくて丁寧な話し方の感じからリーダーシップと行動力がどこから出てくるのか不思議でしたが、取材以後の佐渡支部と新潟支部の合同例会に参加して、懇親会、二次会と会が進むにつれ別人にように会を盛り上げている様子はどちらが本当の山下さんなのか分からなくなりましたが、別の一面を見ることができて良かったです。

<沖野彫刻 沖野 兼一(燕支部)記>

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