同友にいがた vol.333[2015年6月号]

少しの変化に敏感に対応する。アイエムのブランドを確立する。 - 牧野 章一さん(上越支部) アイエムタクシー株式会社 代表取締役 | 同友にいがた vol.333[2015年6月号]

2015年3月14日、北陸新幹線「上越妙高駅」が開業いたしました。

整備計画が決まって以来、40年越しの悲願が実現したのです。

開業に携わった多くの方々、そして地域の皆さんが描いた夢が実現したのです。「夢を描く」新幹線はわが社の夢の1つでした。

夢を描く

アイエムタクシーは1998年、以前からあった上越のタクシー会社を引き受け新たに設立した会社です。バブルが弾け、何もかもがどんどん下がる中で北陸新幹線開通は大いなる希望でした。当時"8年後に開業する"といわれていました。

会社は、敷地が狭く増車もままならぬ状態でしたので移転先を探していました。そこで、新幹線駅予定地に近い場所へ新社屋(本社営業所)を持つことにしました。近くには、県営アパートが3棟、他は田んぼと畑、繁華街に遠いという3等立地でありました(今も大して変わっていませんが。)。

なぜ、そうしたのか。町の中心点は多くの場合「駅」です。ですので、町の秩序は駅を中心にしてできています。必然、駅構内の秩序も決まっています。その秩序に侵入したのが郊外店、ロードサイドショップですが...。

当然、新幹線開業に伴う新規需要へお応えするためもありましたが、私たちの移動サービスは3等立地の街づくり、新しい秩序づくりに必ず必要とされる、お役立ちができるはずという想いが強くありました。

それから2年後の2000年に新社屋を建て3等立地での営業が始まります。

ですが、この年でも"開業は8年後"と言われ8年8年が続き開業時期の雲行きが怪しくなります。結局その後15年後となり、17年越しの悲願になったわけです。

この新社屋(本社営業所)を建てた当時はキツカッタです(今も楽だといえませんが!!)。組合さんと賃金体系の改定を巡って係争関係となり地方労働委員会で戦う日々が、足掛け3年続きました。

また、2002年デフレの真っただ中、タクシービックバーン(タクシー参入規制緩和)で新しい競合が参入し競合が激しくなり、乗務員さんの労働条件悪化が社会問題化していきます。また、その後しばらくして、新潟市で老舗タクシー会社の倒産が続きました。

その頃から表面化した業界の再編成は今に至り、更に加速度を増しています。当時、何かにつけ自分に言い続けたのは、「I Have a Dream.」私には夢があるでした。この言葉を繰り返しながら、心を静め明日へ向ったと言えばかっこよすぎるかもしれませんがそんな日もありました。

同友会で見つかった私の課題

同友会には2002年4月に入会しました。

同友会とはだいぶ以前から長野で縁がありました。代表理事が中学の同窓生でした。親しい友人もいました。ですが入会いたしませんでした。しかし、あの「不安の日々」が私を同友会へ向わせたと思います。同友会に呼ばれたのです。

この2002年はわが社にとって歴史的な年でした。それは、先ほど挙げたタクシービックバーン、組合さんとの争議関係に終止符が打たれる、そして資金繰りの悪化です。先ほど申し上げましたが「I Have a Dream.」を一番つぶやいた時期だったのです。

しばらくして、また私を呼ぶ声がします。

『ヘイ龍(ドラゴン)カム・ヒアといふ声がする(まつ暗だぜつていふ声が添ふ)』

 岡村隆 詩歌集

こんな感じだったか!?"ドラゴン"を、"人を生かせぬ小心者"に、"まつ暗だぜ"を、"お先まっ暗だぜ"に変えてもらうと、一層私を呼んだ声は「何であったか」を理解していただけると思います。

「経営指針を創る会」にカム・ヒヤされたのです。2003年のことです。

同友にいがた vol.333[2015年6月号]「経営指針を創る会」で、特に認識を深めたのは社員さんとの関わりでした。それまで、わが社の再建は経営者である私の肩にかかっている。それが経営者の責任だという想いが強く、自分のやり方を一方的に押しつけている事実にセッションで気づかされました。"勝つために戦う"という考えも根強くありました。

一方で、会社再建は私利私欲でなく「社員さんのため...」は本心でしたので、その考えが履き違いだと微塵にも思いませんでした。「あなたの経営理念は指示書、規則集だ」「あなたは社員を当てにする勇気がない」という仲間(メンター)の指摘は今も耳に残っています。やり方を教えていた自分に気づかされた場面です。

「経営者の責任」とは、企業の維持発展だけでなく「労働者の自発性が発揮される」努力が、何よりも重要だと言われています。

私は、私の思い込みのPでDを指示して社員を追い込みC・A を管理者に強要していたというか、社員さんの自発性を発揮させることとはどういうことかが分からなかったのです。

話をよく聞く、胸襟を開いて話をする等コミュニケーションを深めるための人間性、姿勢の問題は分かるのですが、自発性を引き出す着眼点(構造)がつかめませんでした。

これは「経営指針を創る会」終了後も抱えてきた私の課題でもありました。

今は予感の段階ですが、現場・現物・現実から始まりそこへ戻る会話、現場・現物・現実から離れないコミュニケーションに解があると考えています。

「経営指針を創る会」で出会った自分といまだ付き合っています。この付き合いがあればこそ、わが社の力を引きだすことができると確信しています。

アイエムのブランド

 タクシー業界は圧倒的な人手不足に翻弄されています。新潟県の人材確保支援事業の重点4分野(介護・保育・看護・建築)へ運輸業が加わりました。タクシーを始めとするトラック・バスの人手不足が社会問題になっています。また、飲食業界も大変だと聞いています。

「高齢者・障害者・介護を抱える人など事情を持った人に働く機会を柔軟に提供する。それに合う雇用の形態を創出する」をしないと社会が持たないのではないでしょうか。

昨年、仕事に繁忙・閑散の差が大きくある、そのリズムがわが社の繁・閑リズムと逆の企業さまから社員さんを出向いただきました。提携企業さまは同友会会員です。有り難かったです。紙面を借りて心からお礼申し上げます。

同友会会員の連携は製造販売など仕事に係わるだけでなく社員さんの働く場もある、他にも多くの可能性が潜んでいると感じています。

教育は、乗務員さんでいうと入社時の新人教育(14日間)、社員全体集会年8回(1回2時間)、観光講習・観光検定(自主参加)です。"「より親切に さらに親切に」共感的対応を育成する。"が本年度の教育テーマです。

これには、お客さま情報が日々研鑽のテキストです("お客さまの声")。営業の中で頂くお客さまのお叱り・要望、そしてお褒めの言葉が運転日報の記載欄に書かれてきます。これを全員で共有する流れです。

基本的な態度は、マイナスや負のご指摘に明日の宝があるのです。お叱り頂いたことを良くやったとは言いませんが「より親切にさらに親切に」のために"なぜ、お客さまはそう感じたのか"を深める絶好の機会として捉えています。現場・現物・現実、ここでは「〜でなければならない」から入りません。

同友にいがた vol.333[2015年6月号]わが社は北陸新幹線「上越妙高駅」に一番近いタクシー会社です。駅から500mの地の利を活かして、積極的な営業展開をしていると思われがちですが、目立った動きはしていません。すべての事業に言えることだと思いますが、きちんとした現状分析がなければ事業経営は間違えると思っています。

その意味で、この新駅を基点とした上越妙高地域の動きはまだまだ未知数です。開業の賑わいに伴う特需はありましたが、それが落ちつく連休後の状況、各地への移動動線がどのように変わり、町がどのように変貌するか?そのあたりをゼロリセットした上で先が見えたとき、ビジネスチャンスも見えてくると予感しています。師匠が言っておられました。「社会実験はこわごわする」ですと。

地域の需要が毎年落ち込む現状で、少しの変化に敏感に対応できる力こそ、戦わず勝つ秘訣であり、アイエムのブランドとして地域のポジショニングができると信じております。

当地へおいで頂いたときはアイエムにご乗車ください。そして、素敵な笑顔で厳しいご意見をお寄せください。お待ちしております。

<アイエムタクシー株式会社 牧野 章一(上越支部)記>


▼取材班がみつけた会社の横顔

桜が満開の高田城周辺の喧噪もここまでは届いておらず、のどかな田園風景が残っている中に、開通したばかりの北陸新幹線上越妙高駅が文字通りそびえ立っています。その駅を見上げるくらい近くにある本社にお邪魔しました。 

取材班がみつけた会社の横顔(アイエムタクシー株式会社)社屋に入ってまず驚いたのは、女性事務員さんの多いことです。10名はいらっしゃったと思います。営業所長も本間よし子さんという女性でした。65名のドライバーを取り纏めるのはとても苦労が多いのではないかと思います。そして運行管理者は男性の駒沢和洋さんです。お二人から社員の採用についてや、定着率が悪いことなどの悩みを伺うことが出来ました。牧野社長からは、基本を忠実に守ることが差別化につながるという話を伺いました。先のお二人も、牧野社長は基本にはうるさいとおっしゃっていたので、社長のぶれない姿勢が察しられました。また、ここ10年、3%ずつフリーのお客様が減っているので、累計では三割減になっているそうです。

新幹線の効果も数字でしっかりチェックされていました。

あの牧野社長の会社なので、どんな話が飛び出すかと思っていましたが、基本という原点を大切にされていることが分かり、妙に安心して帰路に付きました。

<株式会社プロビデンス 山田 国人(下越南支部)記>

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